美白化粧品だけじゃない化粧品の落とし穴
【2013年7月24日のブログ記事に加筆修正して掲載】
いまさら驚きませんが、美白化粧品で白斑ができたというニュースが取り上げられています。
何を隠そう私は新卒の2年間、“もう一個の「K」から始まる”化粧品会社の美容研究所で働いていました。
今はDr.Hauschkaを中心にわずかながら化粧品を扱っていますし、こういうニュースを見ると他人事ではないのです。今日はすごく久しぶりに化粧品の話を書いていきます。
【肌のしくみと日焼け・シミ生成のメカニズム】
肌は表皮、真皮、皮下組織に分類され、表皮の部分は厚さ平均0.2mmというミクロの世界。
皮膚には、ここに書ききれないくらい色々な機能があります。ひとつには、体からの水分の蒸散を防ぐと同時に、有害物質が体内に侵入するのを防ぐバリア機能があります。この機能は主に表皮の角層、そして顆粒層が担っています。
表皮の一番下の基底層にメラノサイトという細胞が存在します。
紫外線や炎症などによって、メラノサイトに「メラニンを作れ」という情報が伝達することで、メラニン(黒く見える正体)が生成されます。
>>>ここをもう少し細かくみると、メラノサイトでは命令を受けるとチロシナーゼ(酵素)をたくさん生産し始めます。そのチロシナーゼとチロシンが結合してメラニンを作るのです。
日にあたると肌が黒くなる(=メラニンが生成される)のは、身体を紫外線から守るための一種の防御反応ですから、身体というのはいくつもの防御システムを備えていると言えます。
若くて健康な肌では、ターンオーバーによりメラニンを角層まで押し上げ、いずれアカとなってはがれ落ちていきます。
さて、化粧品会社が一生懸命に開発している美白技術は、できてしまったメラニンを還元するものや、チロシナーゼとチロシンの結合を、別の物質が先回りしてブロックするというメラニン生成阻害を謳ったものがメインです。
つまり基底層になんらかの「有効成分」を届けるということです。ある種の「界面活性剤」と「美白有効成分」を抱き合わせて「浸透」させる方法です。
でも、ちょっと待ってください。
もともと皮膚に備わっているバリア構造を有効成分が通過していくことは、本当に肌にとって良いことなのでしょうか??
私はとても怖いことだと思っています。
浸透させるというのは、肌のバリア機能を一時的に弱めて通過させるということです。
100%安全な有効成分や基材など存在しません。それらが浸透するわけです。
本当のオーガニック化粧品は決して有効成分の基底層(まして真皮層)までの浸透を謳ったりしていません。身体の機能を尊重しているから、バリア構造のあたりまでしか作用しないものがほとんどです。例外と言えば精油くらい。だから一般的に即効性がないとか、効力が弱いといわれるのでしょう。
K社時代から今までたくさんの方の肌に触れてきました。浸透系の化粧品を多用している方の肌ほど、本当に肌の力が弱くなっているケースが多いです。日焼けによるシミは消えることが多いけれど、化粧品によるシミは消えません。
きれいな肌でいたかったら、
「これ一本でつけた瞬間に肌の奥までしっとり潤う」
「医薬部外品の美白成分で透き通るような白さに」
などの耳障りの良いコピーに、どうか惑わされないで欲しいと思います。
そしてたとえオーガニックの化粧品であっても、化粧品に過剰な期待をするべきではないと思います。
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